お客様を、縛らない
契約で顧客を縛らないと、経営は不安定になるのではないか? 賠償上限・解約予告・囲い込みという自分を守る条文をすべて外し、途中で解約されても解約までの分だけをいただく一枚にした理由を書きます。

もし明日、顧客がゼロになっても
もし契約で縛らなければ、明日にはお客様がゼロになるかもしれない。それでもいい。私たちは、そう決めました。
IT業界の契約書は、たいてい売り手を守る方向に厚くなります。長期の縛り、解約の制限、囲い込み——システム会社のロックインです。「逃げられない仕組み」で、売上の安定をつくる。よくあるやり方です。私たちも、最初に流用したひな形は、まさにそういう契約でした。
けれど、自社の契約書を作り直すとき、一つの問いの前で手が止まりました。これは、お客様を守る条文だろうか。それとも、自分たちを守る条文だろうか。
リスクは、契約違反ではありません
考えてみて、はっきりしたことがあります。私たちにとっての本当のリスクは、お客様が契約を破ることではありません。
本当のリスクは、お客様が求めてもいないものを作って、使えないものを納めてしまうこと。それだけです。良い仕事をして、働いた分をいただく。シンプルに、それでいい。そう考えたとき、契約で守るべきものが変わりました。守るべきは、お金ではなく、信頼のほうでした。
そして気づきます。契約で相手を縛って安定をつくる、という発想そのものが、私たちの考え方と逆だったのです。
縛りで安定をつくる会社は、強くありません
お客様に有利な契約を差し出せる会社は、価値で選ばれ続ける自信がある会社だと、私たちは考えています。縛らなければ顧客が離れる、という前提に立つと、契約書はどんどん固くなります。賠償の上限、遅延への罰則、長い解約予告。自分を守る条文が増えていきます。
でも、守りを固めるほど、相手には別のものが伝わります。「この会社は、逃げる準備をしているのだな」と。
弱い会社は、自分を守るために契約書を固めます。強い会社は、お客様に有利な契約を出せます。これは、力の差ではなく、覚悟の差です。価値を出し続ける自信がなければ、縛りでつなぎ止めるしかない。逆に言えば、縛りで引き止めようとした瞬間、その会社は「もう価値で選ばれない」と自分で認めているのです。
囲い込みではなく、
選ばれ続けることだ。
強さの本質は
私たちも、自分を守ろうとしていました
偉そうなことは言えません。私たちも最初は、自分を守る条文を並べていました。
固い言葉、難しい漢字、こちらに有利な但し書き。書いているうちに、これはお客様が読んで安心できる契約ではないと気づきました。契約のことを知らない人が読んでも、すっと内容が分かって、安心できるか。その一点を基準にし直しました。
だから私たちは、縛りを外していきました。途中で解約されても、解約までの分をいただくだけ。私たちの側からは、よほどやむを得ない事情がない限り、逃げない。それを覚悟として、条文に書きました。手に入れた知見も、自分たちで囲い込まない。みんなで強くなるほうへ使う。お客様がゼロになるかもしれない契約を、私たちは選びました。
製造業で学んだ、当たり前のこと
なぜ、ここまで言い切れるのか。私たちが、製造業から来たからです。
製造業の現場では、価値が下がれば、取引は切られます。現状維持は、ゆるやかな後退です。それが当たり前の世界でした。この当たり前を、私たちはそのままIT業界に持ち込んでいます。
だから、縛って安定をつくることをしません。安定とは、相手の選択肢を奪ってつくるものではなく、価値を作り続けることで、選ばれ続けた結果です。
契約書は、その覚悟を最初に示す場所だと考えています。お客様を縛らない一枚を差し出せること。それが、私たちが価値で勝負すると決めた、何よりの証明です。
よくあるご質問
- 顧客を縛らない契約だと、御社の経営はかえって不安定になりませんか。
- むしろ私たちは、縛りでつなぎ止めた売上のほうを不安定だと考えています。相手が離れたくても離れられない状態は、価値が落ちても気づけない状態でもあるからです。私たちは、良い仕事をして働いた分だけをいただき、選ばれ続けることで安定をつくります。数字の上下は覚悟のうえで、そのぶん一件ごとの中身に力を注いでいます。
- 契約を途中で解約する場合、それまで作ったシステムやデータは引き取れますか。
- 引き取っていただけます。私たちは、作ったものやデータをこちらで抱え込むことはしません。解約が決まった時点で、動いているものと中のデータを、お客様が使える形でお渡しします。得た知見もためこまず共有する方針なので、離れたあとにお客様の手元で困らないことを大事にしています。
- お客様に有利な契約ばかりでは、御社が損をすることはないのですか。
- 有利にしているのは解約や縛りの条件で、いただく対価そのものを安くしているわけではありません。私たちは働いた分を正当にいただくので、一件ごとに損が出る作りにはしていません。損だと感じるとすれば、価値を出せずに選ばれなかったときで、それは私たちが直すべき問題です。縛りで穴埋めするより、中身で選ばれ続けるほうが、長い目で見て私たちの経営も安定すると考えています。
- 契約を結ぶ前に、条文の内容を質問したり修正をお願いしたりできますか。
- できます。私たちは、契約のことを知らない方が読んでも内容が分かることを基準に条文を作っているので、分かりにくい箇所は遠慮なく質問してください。ご不安な条件があれば、その場で一緒に文言を見直します。こちらに一方的に有利な但し書きを忍ばせることはしないので、納得できるまで確認したうえで結んでいただければと思います。
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