コラム

「脱Excel」が正解とは限らない。その属人化には、理由がある

一人でExcelを捨てて失敗した私たちが、現場のExcelをすぐ潰さない理由。脱Excelや属人化潰しを目的にせず、今いる人が回せる現場知を読むところから始めます。

エマルシア株式会社

「脱Excel」から、私たちは始めません

中小企業のDXは、たいてい「脱Excel」から始まります。属人化したExcelを捨て、ちゃんとしたシステムに乗せ替える。誰が見ても進歩に見えますし、提案する側も売りやすい話です。

私たちは、そこから始めません。Excelを捨てて、手痛く失敗した側だからです。

前職の化粧品工場で、品質管理の仕組みを一人で作っていました。最初はExcelでした。やがて、もっと立派なものを、と作り込み、最後はVBAとAccessで八万行のシステムになりました。記録はすべて残る。GMPにも対応している。我ながら、いいものができたと思いました。けれど現場は「分かりにくい」と言い、ほとんど使われませんでした。脱Excelした先に待っていたのは、誰も使わない立派なシステムでした。

現場のために、Excelを作り込んだ

皮肉なのは、いちばん現場に使われていたのが、捨てる前のExcelだったことです。

そのExcelには、現場に合わせた工夫が詰まっていました。現場はマウスを前提にできないので、タブレットにして、指で押せるようにボタンを大きくしました。数値を入れるたびに電卓を出してほしい、という無茶振りに応えて、電卓を自作しました。標準のカレンダーは指には小さすぎたので、大きく作り直し、押すと光るようにしました。

これは、誰かが現場で困った数だけ積み上がった工夫です。傍から見れば「属人的なExcel」、整理されていない、その人にしか分からない代物です。けれど中身は、現場の事情に一つずつ合わせた最適化の塊でした。それを「属人化しているから」という理由だけで捨てたとき、工夫ごと消えました。

属人化は、悪ではありません

属人化を潰せ、とよく言われます。人が辞めたら回らなくなるから、特定の誰かに依存するな、と。理屈は分かります。

でも、現場のExcelが属人化しているということは、裏を返せば、その一枚に誰かの現場知が詰まっているということです。なぜその列があるのか。なぜそこだけ手入力なのか。なぜ毎月そのシートをコピーするのか。一つひとつに、過去のトラブルや、現場なりの理由があります。属人化とは、その人が現場を回してきた歴史そのものです。

世間の常識
属人化は、潰すべき悪
製造業の当たり前
その一枚に、現場知が詰まっている

中身を読まずに捨てると、理由ごと消える。

それを「属人化=悪」と決めつけて、中身を読まずにシステムへ移すと、理由ごと捨てることになります。残るのは、現場の事情を知らない、きれいなだけのシステムです。そして現場は、こっそり手元のExcelに戻ります。私たちは、それを何度も見てきました。

私も「Excelは卒業すべき」と思っていました

偉そうに書いていますが、私自身がいちばん勘違いしていました。

Excelは仮の道具で、いつか卒業すべきもの。属人化は未熟さの証拠で、整えるのが正しい。そう信じて、現場が回せていたExcelを、立派なシステムに置き換えようとしました。記録さえきっちり残せば、すべてうまくいくと思い込んでいたのです。

結果は、すでに書いたとおりです。「脱Excel」そのものが目的になっていて、その先で誰が何を使うのかを、私は見ていませんでした。捨てること自体に満足していたのです。作ったものが使われるとは限らない。当たり前のことに、八万行を書き終えてから気づきました。

捨てるかどうかは、最後に決めます

では、どうするか。私たちの結論は、「脱Excel」を目的にしない、ということです。

目的は、いつだって今いる人が現場を回せることです。Excelを捨てるかどうかは、その手段の一つにすぎません。だから私たちは、最初に「このExcelを捨てるべきか」を問いません。まず、そのExcelで何が回っているのかを読みます。捨てたほうが現場が楽になるなら、捨てます。Excelのまま使いやすくするほうが速いなら、無理に脱Excelしません。立派なシステムに乗せ替えるより、今あるExcelを少し直すほうが、現場が楽になることは珍しくありません。

現状解決脱Excelを先に決める:理由ごと捨てるExcelを読む:今いる人で回す

手段をゴールに置き換えない。

「脱Excel」は手段であって、ゴールではありません。手段をゴールに置き換えた瞬間、現場が回せていた仕組みごと壊しにかかってしまう。私たちは、それで一度壊した側です。

だから、まず「誰が回しているか」を見ます

この失敗があるから、私たちが顧客のExcelと向き合うとき、最初に見るのは仕様ではありません。誰がこのExcelを回していて、どんな工夫が積み上がっているか。何を変えたら、その人がもっと楽に回せるか。そこを見ます。

誰がこのExcelを回しているか。
その中に、どんな工夫が積み上がっているか。
何を変えたら、その人がもっと楽に回せるか。

捨てるかどうかは、そのあと。

属人化したExcelは、潰す対象ではなく、その会社が現場で勝ってきた証拠です。私たちは、それを一度きれいに捨てて失敗しました。だからいま、お客様の現場では、まずそのExcelを読むところから始めます。捨てるかどうかは、その後です。今いる人が、これまでどおり現場を回し続けられること。その安定をつくることが、私たちにとっての本当のDXだと考えています。

今いる人が回せること。
それだけが、ゴールです。

脱Excelは、手段のひとつ。

一人では、会社は変えられない。
だから、一緒に変える。

まとまっていなくても構いません。
お話を伺い、一緒に整理するところから始めます。

まずは、お気軽にご相談ください。

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