人が辞めるのは、仕事が嫌になったからではない
まじめな人ほど、なぜ静かに辞めていくのか? ミスの手前にはいつも情報の空白があり、半年で去った一人と同じ流れが次の人にも繰り返されるのは、本人ではなく情報が回らない仕組みのせいです。

その人は、辞める日まで「すみません」と言っていた
よく働く人材が辞める原因は、本人の資質ではなく、情報が回らない仕組みにあると私たちは考えています。ある現場に、まじめな人がいました。
朝はいちばん早く来て、頼まれた仕事を断らない。それでも、ミスが続きました。そのたびに頭を下げ、「すみません」と言う。半年ほどして、その人は静かに辞めていきました。最後まで、誰かを責めることはありませんでした。悪いのは自分だ、と思ったまま去っていったのです。
辞めたあと、まわりは言いました。やる気はあったんだけどね、向いていなかったんだろう、と。私たちも、最初はそう聞いていました。けれど、その人がどこでつまずいていたかを一つずつたどると、見え方が変わってきました。
ミスの手前に、いつも情報の空白があった
要らないミスの多くは、本人の不注意ではなく、情報が届かない場所で起きていました。その人のミスを並べてみると、不思議と共通していました。どれも、判断に必要な情報が手元になかった場面で起きていたのです。
前の工程がどうなっているか分からない。例外の処理がどこにも書いていない。聞ける相手が忙しくて、捕まらない。情報が欠けたまま、それでも止めるわけにはいかないから、その人は自分の勘で進めました。そして、外す。外せば、責められる。何度か続くと、人は静かに自信を失っていきます。
ミスの手前には、いつも情報の空白があった。
並べてみると、どこにも「その人が悪い」と言い切れる地点はありませんでした。情報が欠けていれば、誰がそこに立っても、同じように外したはずです。辞けたのは、やる気がなかったからではなく、要らないミスと要らない叱責を、人より多く背負わされていたからでした。
同じ流れは、次の人にも繰り返された
人を入れ替えても解決しないのは、抜けた原因が本人ではなく、仕組みの側にあるからです。その人が抜けたあと、欠員に新しい人が入りました。
しばらくして、同じことが起きました。情報の空白の同じ場所で、同じようにつまずき、同じように責められる。やがて、その人も辞める気配を見せはじめました。人は変わったのに、流れは変わらなかったのです。
人を入れ替えても、仕組みが残れば同じことが続く。
辞める人が出るたびに本人の資質の話にしていると、仕組みは前のまま残ります。採用にいくらかけても、底の抜けたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。手放しているのは、いつも、ちゃんとやろうとしていた人のほうでした。
私たちも、機能のほうを見ていた
偉そうに書いていますが、私たち自身、長いあいだ機能のほうばかり見ていました。
システムを作るとき、どんな機能を載せるか、どう正しく動かすかに頭を使う。その画面の向こうで、誰がどこで情報に詰まり、どんな顔で手を止めているのか。そこを、ほとんど見ていませんでした。あの「すみません」を繰り返していた一人の通り道に、機能の一覧表は何も気づかせてくれません。
人が辞けるのを止めるのは、機能の数ではありませんでした。その人が、必要なときに必要な情報にたどり着けるか。間違えても、それが個人の責任ではなく仕組みで受け止められるか。だから私たちは、システムの役割を一つに絞りました。要らないミスと、要らない叱責を減らすことです。
辞める流れを、入口でせき止める。
必要な情報が、必要な人の手元に、必要なときに届く。それだけで判断の誤りは減り、責められる場面が減り、気持ちは折れにくくなります。さっきの流れを、入口の「情報が足りない」のところでせき止めるわけです。人を甘やかすのではなく、本来しなくていい失敗で人を消耗させない、というだけのことです。
あの一人を、責めずに済む現場へ
私たちがお客様の現場でまず聞くのは、どんな機能が欲しいか、ではありません。いま、誰が、どこで情報に詰まって、つらい思いをしているか。聞くのは、そちらです。
辞める人が出る会社を、私たちは「人が続かない会社」とは呼びません。情報が回らない仕組みが、いい人を一人ずつ手放している会社だと見ます。仕組みを直せば、いまいる人が辞けずに済む。新しく採るより、いま現場を支えている人が明日も同じように働けることのほうが、ずっと確かな安定です。
人を変えるのではなく、
人が折れる流れのほうを変えます。
採るより、辞めさせないこと。
中小企業にとって、一人が辞けることは、ただの欠員ではありません。その人が抱えていた段取りや判断ごと、現場から消えるということです。あの「すみません」を、もう誰にも言わせない。そのために私たちは、機能を載せる前に、現場のどこで人が折れているかを見ます。使われるシステムをつくることと、人が辞けずに済む現場をつくることは、根のところで同じでした。
よくあるご質問
- 現場のどこで人が詰まっているかは、どうやって見つけるのですか。
- 私たちは、機能の要望をうかがう前に、いま誰がどの場面で情報に詰まっているかを現場で見せていただきます。担当者ご本人に、判断の直前で何が分からずに手が止まるのかを、順を追って聞き取ります。数値の入力や例外の処理など、つまずきやすい箇所は決まった場所に現れることが多いので、そこを一つずつ確かめます。仕組みの側に原因を見つけるまでは、システムの形は決めません。
- 情報が回らない仕組みを直すのに、どれくらいの期間と費用がかかりますか。
- まず現場のつまずきを読む工程に、二週間から四週間ほどいただきます。そこで何が原因かが見えてから、直す範囲と費用をお出しします。私たちは最初に一律の金額を出しません。どこで情報が止まっているか分からないうちに出した見積もりは、後でずれるからです。
- 本当に本人の能力不足でミスが起きている場合は、どう見分けるのですか。
- 私たちは、同じ場面で複数の人が同じようにつまずくかどうかを見ます。一人だけが特定の作業でつまずくなら教育や配置の話ですが、誰が入っても同じ箇所で外すなら、それは仕組みの側の問題です。見分けるために、つまずいた場面を人ごとではなく場所ごとに並べ直します。能力の話と仕組みの話を切り分けてから、どこに手を入れるかを決めます。
- すでに離職が続いている現場でも、いまから直せますか。何から始めればいいですか。
- 始められます。まず、直近で辞めた方や、いま負担が偏っている方が、どの場面で情報に詰まっていたかを一緒に洗い出します。全部を一度に作り替えるのではなく、要らない叱責が起きている一つの流れから手を入れます。小さく一箇所を直して、責められる場面が減ることを確かめてから、次に広げます。採用で欠員を埋める前に、いまいる人の負担を軽くするほうを先に置きます。
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