紙とExcelしかない現場で、独学で組み続けたシステム
独学でも、業務システムはどこまで作れるのか? 化粧品の品質管理の現場で、誰にも教わらずVBAを三万九千行書き、受注から検査までを一つに束ねていった話です。

はじめて書いたプログラムは、Excelのシートを一枚コピーするだけのものでした。それに、丸一日かかりました。今なら数分の処理に、朝から晩までかけていたのです。
華やかな出発ではありません。でも、動いた瞬間の感覚を、私はいまだに覚えています。
目指していたのは、GMPだった
私のつくるものは、机の上の理屈ではなく、いつも現場の必要から生まれてきました。当時、私は化粧品メーカーで品質管理をしていました。向かっていたのは、GMPの取得です。GMPを取るには、記録が要ります。何を、いつ、誰が、どうやったのか。そのすべてを残し、後から追えるようにしておく。それが品質を保証する土台だからです。
だから私は、その記録を守ろうとしました。ただ、守ろうとするほど壁にぶつかります。残すべき記録は膨大で、しかも現場は少人数でした。全部を人の手でやっていたら、時間がいくらあっても足りません。
少人数という制約が、思考を変えた
人がいないなら、無駄を省くしかありません。この制約が、私の頭を一つの問いに向かわせました。同じ記録を、どうすればより少ない手数で残せるか。極限まで無駄を削る。そこだけを、ひたすら考えるようになったのです。
だから、手を動かしました。教科書もメンターもいません。必要に迫られて、一つずつ覚えるしかありませんでした。
華麗な独学ではありません。動かないコードと、何日もにらめっこしました。
道具が、仕組みに育っていった
設計図を先に描いたわけではありません。目の前の面倒を、一つずつ手で消していっただけです。はじめは単発のマクロでした。それが検索フォームのついた道具になり、やがてログインとデータベースを持つ仕組みへと育っていきます。気づけば、受注から製造、検査、記録までを一つに束ねるところまで来ていました。
誰かに褒められるためではありません。少人数で、それでも記録を守りきる。その一点を積み上げた結果でした。
手を動かして、はじめて見えたもの
独学でシステムを組み上げていく過程で、一つ確かになったことがあります。本当の課題は、現場で手を動かさないと見えてこない、ということです。
会議室で聞く「困っていること」と、実際に記録を書く手が止まる場所は、別でした。抜き取り検査のどこが煩わしいか。ロットの記録がなぜ後で効いてくるか。それは、現場で品質管理をやり、自分でその仕組みを組んだ人間にしか、肌では分かりません。
だから、現場を机上で語らない
いま私たちがお客様の現場に入るとき、いちばん大事にしているのは、現場で手を動かして得た肌感覚です。
きれいな要件定義書からは、本当に手が止まる場所は出てきません。私たちが見るのは、書類ではなく、実際に手を動かしている人です。かつて自分が、紙とExcelしかない現場で面倒を一つずつ消していったように、あなたの現場の面倒も、隣で一緒に消していきます。
遠回りに見えるかもしれません。それでも、手を動かした人間だけが持つ肌感覚は、机上の知識では埋められないものだと、私は思っています。
よくあるご質問
- 独学で作られたシステムと聞くと、品質が心配です。安心して任せられますか。
- 独学で始めたからこそ、私たちは動くことだけを頼りにシステムを組んできました。教科書どおりではなく、現場で本当に必要な形に寄せていくやり方です。ただし、作った本人にしか分からない状態は残しません。なぜその作りにしたのかを記録に残し、後から別の人が引き継いでも追える形にしてお渡しします。属人化させないことは、独学かどうかとは別に、私たちが最初から守っている線です。
- 現場に入って課題を掴む工程には、どれくらいの期間と費用がかかりますか。
- 私たちはまず、現場で誰がどの作業に詰まっているかを見せていただく時間を、二週間から一か月ほどいただきます。この工程だけを切り出して費用を請求することはせず、提案の一部として行うのが基本です。最初に一律の見積もりを出さないのは、何に手が止まっているかが見えないうちに出した金額は、後で必ずずれるからです。現場を読み終えた段階で、何を作るかと費用をあわせて提示します。
- 遠方でも、現場に入って課題を掴んでもらえますか。
- オンラインでも進められますが、私たちは可能なら一度は現場に足を運ばせていただくようお願いしています。机の上の紙や、担当者が無意識にしている手順は、画面越しには見えにくいからです。難しい場合は、作業の様子を写真や録画で共有していただき、質問を重ねて補います。遠方だからという理由で、現場を見ずに設計を始めることはしません。
- うちは化粧品や製造業ではありませんが、それでも頼めますか。
- 頼めます。私たちが現場でしてきたのは、化粧品の品質管理という特定の知識そのものではなく、少人数で回る仕組みを、手を動かしながら組み立てることでした。業種が変わっても、誰がどこで詰まっているかを掴み、そこから無駄を削るやり方は変わりません。まずはあなたの現場を見せていただき、私たちの進め方が合うかを一緒に確かめるところから始めます。