制限があるからこそ、最適化できる
「人が足りない」「予算がない」——中小企業の相談でいちばん多いこの二つの制約は、弱点なのか? 大企業向けの教科書を捨て、ありとあらゆる無駄を一つずつ全部通った私が、今いる人でコントロールできる範囲を定義するところから始める理由を書きます。

「人が足りない」は、弱点として語られる
人が足りない、予算がないという制限こそが、最適化を進める起点になります。制限があるからこそ、今いる人と今ある材料で何ができるかを、本気で考えざるをえないからです。中小企業のご相談を受けていて、いちばん多く聞く言葉があります。「人が足りない」。「予算がない」。この制約を、みなさん、弱点として語られます。
でも私は、逆に見ています。制限があるからこそ、最適化できる。そう考えているのです。
ただし、正直に言っておきます。私はその考えに、近道でたどり着いたわけではありません。
最初は、教科書通りにやった
教科書通りに始めたことが、私の最初のつまずきでした。以前、化粧品メーカーで品質管理をしていたころの話です。GMPの取得を目指し、膨大な記録を守ろうとしていました。
GMPを目指していたころ、私がまずやったのは、基本に忠実にやることでした。本を読み、書いてある通りに進める。でも、うまくいきませんでした。教科書に書かれているのは、人も資本もある大企業のやり方だったのです。少人数の現場では、まるで回りませんでした。
無駄は、省いたのではありません。全部通りました
最初から、合理的に考えられたわけではないのです。
私は、ありとあらゆる無駄なやり方を、一つずつ、全部やりました。試しては、合わないと痛感し、また別のやり方を試す。その繰り返しでした。近道など、どこにもありませんでした。
無駄を、全部通ったのです。
無駄を通り抜けるうちに、見えてきたものがあります。大企業の正解ではなく、この現場の正解です。人が少ない。時間がない。その環境だからこそ成り立つ、やり方でした。
今いる人を、最大限に生かしたうえで、最適化する。これが、無駄を全部通った先に、私がたどり着いた考え方です。
制限は、最適化を止める敵ではありませんでした。むしろ、その現場だけの正解を、探させてくれるものでした。
「足りないなら、足せばいい」という声もあります
人を足す前に、まず内側でやるべきことがあります。もちろん、人を足せば解決することも、あります。それも一つの正解です。
でも、私がこだわっているのは、その前にやるべきことがある、ということです。
DXやAIに手を伸ばす会社の多くは、どこかで停滞しています。そういうとき、外から状況が変わるのを待つのは、運任せと同じです。助成金、外注、市場の風向き。外の力を期待するのは、悪いことではありません。でも、それだけに頼るのは、自分たちが止まったまま、ということです。
停滞しているときこそ、自分たちが動く。外に頼るより先に、内側を見る。内側なら、今日からデータを集められますし、毎日試せます。これが、「今いる人で最適化する」ということの、本当の意味です。
品質管理は、自分たちを律する仕組みです
品質管理とは、まず自分たちがどこまでをコントロールできるのかを見極め、線を引く作業です。品質管理の考え方でいうと、こうなります。
たとえば、入荷する資材の品質は、自分ではコントロールできません。そこは、外の領域です。だからといって、いきなり容器そのものを変えるような大きな試作に飛びつくのは、順番が違います。まずやるべきは、自社の品質を、自分たちがどこまでコントロールできるのかを、きちんと定義すること。「ここまでは自分たちの責任、ここから先は外の仕事」と、線を引く。そのうえで初めて、容器会社を変えるといった外への施策が、効いてきます。
自分たちを律するための仕組みづくりです。
だから、外に頼る前に、内側から
私たちがお客様と最初にやるのは、「何を外から足すか」ではありません。あなたの会社が、自分たちでコントロールできる範囲はどこまでか。それを、一緒に定義することです。
自分たちでコントロールできる範囲の線が引ければ、今いる人で、毎日、良くしていけます。外の力は、そのあとで足せばいい。まず自分たちが動く。それが、いちばん確実で、いちばん続くやり方だと、私たちは考えています。
よくあるご質問
- 自分たちでコントロールできる範囲を定義する作業は、どれくらいの期間と費用で頼めますか。
- 私たちはまず、現場の業務と数字がどう流れているかを見せていただく期間を、二週間から一か月ほどいただきます。そのうえで、どこまでを自分たちで律せて、どこから先が外の領域なのかを一緒に線引きし、費用を提示します。最初に一律の金額を出さないのは、現場の状況が見えないうちに出した見積もりが、後で必ずずれるからです。まずは小さな一業務から線を引き、回ることを確かめてから範囲を広げる進め方をお勧めしています。
- 外から人を採用したり外注したりするほうが、結局は速いのではないですか。
- 急いで手を打たなければならない場面では、人を足すのが正解になることもあります。ただ私たちは、足す前に自分たちで動かせる範囲を見ておかないと、採用した人も外注先も、何に困っているのか分からないまま入ってくることになると考えています。内側の線が引けていれば、外の力をどこに足せば効くのかが具体的に見えます。だから私たちは、外注や採用を否定するのではなく、それが効く準備を内側で先に整える順番を大事にしています。
- 社内にITやデータに強い人がいなくても、内側の最適化から始められますか。
- 始められます。私たちが最初に行うのは専門知識のいる作業ではなく、今の業務で誰が何にどこまで責任を持てているかを、一緒に言葉にすることだからです。データも、専用のツールを入れる前に、いま手元にある帳票やExcelから集め始められます。専門の人材を採用してから、という順番でなくても、内側の最適化は始められます。
- 内側で最適化を試してみて、それでも状況が変わらなかったときはどうしますか。
- そのときは、どこまでが自分たちで動かせる範囲で、どこから先が外の要因だったのかを、一緒に確認し直します。私たちは線を引いた記録を残しているので、内側をやり切った上で残った課題なのか、線の引き方がずれていたのかを、後から辿れます。内側をやり切って初めて、外注や設備といった外への投資が、どこに効くのかも具体的に見えてきます。動かないことそのものより、何が外の要因なのか分からないまま外にお金を使うことのほうを、私たちは避けたいと考えています。