コラム

一番強い技術を、選ばない

次に覚える言語は、いちばん強いものを選ぶべきなのか? 候補だった強い言語3つ(Python・JavaScript・C#)ではなくGASを選んだのは、その少し前に自分のシステムを現場に根付かせられなかったからです。

エマルシア株式会社

製造業を離れ、私はDX推進室のある会社へ移りました。そこで、VBAという武器が通用しなくなります。

VBAさえあれば何でもできる。そう思っていました。でも時代は、ブラウザで動くWebアプリが主流になっていて、私の道具は古くなっていたのです。次に何を覚えるか。早急に決める必要がありました。

まずは、名前の通ったプログラミング言語を一通り試しました。Python、JavaScript、C#。いわゆる"強い"言語です。できることが多く、プロに評価され、将来性もある。普通なら、この中から選びます。

でも、最終的に選んだのはGASでした。GASはGoogle Apps Scriptの略で、Googleのスプレッドシートなどを動かす、VBAに近い言語です。"強い"とは、まず言われません。VBAと同じ感覚で書けるだろうと高をくくっていたら、考え方がまるで違って、そこそこ苦労しました。それでも、私はこれを選びました。

それでも、GASを選んだ理由

理由は、GASを選ぶ少し前の経験にありました。私はVBAで、自分でも満足のいくシステムを作り上げていながら、それを現場に根付かせられなかったのです。

あの"根付かなかった"という事実が、強い言語に手を伸ばしかけた私を、引き止めました。

根付かなかった理由は、性能ではなかった

私が学んだのは、良いものを作ることと、それが現場で生き続けることは、別の問題だということでした。なぜ根付かなかったのかを突き詰めると、答えははっきりしていました。あのシステムは、私にしか直せなかったからです。

私が抜ければ、誰も手を入れられません。改善もされないまま、やがて使われなくなります。どれだけ精巧に作っても、次の人が触れない時点で、それは長くは生きられないものでした。

業務
属人化:あの人しか分からない

一人に集約された仕組みは、その一人が抜けた瞬間に止まる。

だから、"引き継げるか"で選んだ

次の言語を選ぶ基準は、性能ではありませんでした。自分がいなくなっても、誰かが直せるか。見ていたのは、そこだけです。

GASは、多くの現場が使っているスプレッドシートの上で動きます。触れる人が多く、保守を引き継げる人も見つけやすい。最新でも最強でもありませんが、たしかに"根付く"側の道具でした。

世間の常識
良いシステムは、最新・最強の技術で作る
製造業の当たり前
良いシステムは、次の人が直せる技術で作る

技術者ほど、間違える

いちばん強い技術を選びたくなるのは、技術者ほど陥りやすい落とし穴だと思います。強い道具を選びたくなるのは、作り手の都合であって、現場の都合ではありません。

どれだけ速い車を買っても、運転できる人が社内にいなければ、車庫で眠るだけです。道具は、使い続けられて初めて価値になります。

だから私たちは、最強では選ばない

私たちが選ぶのは、いちばん強い技術ではなく、いちばん引き継げる技術です。

あなたの会社にシステムを納めるとき、私たちが気にするのは最新かどうかではありません。担当の方が変わっても、あなたがいなくても、動き続けるかどうかです。

派手さはないかもしれません。それでも、静かに動き続けるものだけが、現場に残ります。それが、私たちの考える安定です。

よくあるご質問

いちばん強い技術を選ばないと、数年後に古くなって使えなくなりませんか。
私たちが基準にするのは最新かどうかではなく、その技術に触れる人が世の中に多いかどうかです。利用者の多い技術は、たとえ最新でなくても情報や担い手が長く残り、結果として寿命が延びます。逆に、尖った最新技術ほど扱える人が限られ、数年で保守を頼める相手がいなくなることがあります。私たちは、流行の速さより担い手の数で将来性を見ています。
納品後、社内にその技術を触れる人が一人もいない場合はどうするのですか。
まず、すでに社内の誰かが日常的に使っている道具の上で動く形を優先します。たとえば表計算を全員が触っているなら、その延長で保守できる作りにします。それでも触れる人がいないときは、外から保守を頼める人が見つけやすい技術かどうかを一緒に確認してから決めます。私たちは、納品後に直せる人がいなくなる作りを、最初から避けます。
引き継げることを優先すると、開発の費用や期間は高くつきますか。
初期の費用が特別に高くなることはありません。むしろ、多くの人が触れる枯れた技術を選ぶぶん、特殊な環境を組む手間が減ることもあります。効いてくるのは納品後で、直せる人が社内外に残るため、担当が変わったときの作り直しや引き継ぎの費用が抑えられます。私たちは、作るときの安さより、使い続けるあいだの総額で見ていただくようお願いしています。
すでに一人しか直せない技術で作ったシステムが社内にあります。作り直すべきですか。
いきなり全部を作り直すことは勧めません。まず、そのシステムが何を担っていて、どこが止まると業務が困るのかを、作った本人から聞き取ります。そのうえで、触れる人を増やせる形へ少しずつ寄せるか、業務の要になる部分だけ引き継げる技術に移すかを一緒に決めます。私たちは、動いているものを止めずに、直せる人を増やす方向で進めます。

技術は真似できる
定着させるノウハウが、弊社の強みです。

Q1 / 4あと 4 問

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